東京都が「中小企業支援」を名目に鳴り物入りで設立しながら経営危機が続く新銀行東京。先の都議選で民主党が第一党となり、国政も民主党に政権交代したことで都に対する経営撤退圧力が強まる中、六月末に就任した寺井宏隆社長の動向が注目されている。 寺井社長は新聞のインタビューで「三年後をメドに経営継続可能なビジネスモデルを確立したい」などと再建意欲を示すが、現状は悲惨だ。二〇〇五年四月の開業以来のずさんな審査による大量の融資焦げ付きで都が出資した一千億円をフイにしたあげく、四百億円の追加出資を受けてなお経営状態は全く好転しない。 〇九年三月期も最終赤字が百五億円と四期連続で百億円を超える大幅な赤字決算になったあげく、融資に伴う金利収入など業務粗利益四十一億円に対して人件費など経費は六十八億円と銀行経営の体をなしていない。しかも、同三月期の不良債権比率は前期比四ポイント以上増加の一六・七%と全国の銀行平均(二―三%)を大きく上回っており、自力再建が不可能なのは明白だ。 そこで注目されるのが、寺井氏の「人脈」である。旧三和銀行時代にエリートコースの経営企画畑を歩み、旧東海銀行との合併で誕生した旧UFJ銀行でもエースバンカーだった寺井社長は「銀行の中身を承知でトップ就任を引き受けた。人脈を活かして首都圏の地銀や大手信用金庫など新銀行の身売り先を探すことが自分の任務と自負している」(旧UFJのOB)という。

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