「鉄道新時代」がやってきた

執筆者:新田賢吾2009年10月号

アメリカ、中国、インド、ブラジル……。世界で鉄道建設計画が目白押しだ。二十一世紀型インフラとして見直される鉄道の魅力とは何か。「日本の新幹線は最も速く、最も安全で、輸送能力、効率性にもすぐれた高速鉄道システム」。年初に発足したオバマ政権も落ち着きを見せ、選挙キャンペーンではない本格的な政策が次々に打ち出され始めた六月末のワシントンで、JR東海の葛西敬之会長が米政府関係者や鉄道専門家を前に、こう熱弁をふるった。 新幹線を世界に輸出しようという日本の戦略からすれば、当たり前の活動と思いがちだが、自動車王国の米国はこれまで高速鉄道には目もくれず、日本の新幹線売り込みのチャンスなどほとんどなかった。それが一転、米政府関係者が新幹線の説明に真剣に耳を傾ける姿に、日本の鉄道関係者は驚きを隠さない。だが、変化は米国だけではない。世界的に鉄道、とりわけ高速鉄道に強い関心が向けられ、「鉄道新世紀」ともいっていい状況が今、生まれつつあるのだ。 米国では、ロサンゼルス―サンフランシスコ間を筆頭に、シカゴからデトロイト、ミネアポリス、セントルイスなどに放射状に伸びるシカゴ・ハブ路線網、首都ワシントンからアトランタ、ニューオリンズ、ヒューストンなどに伸びる南東部路線など、全米で十路線もの高速鉄道計画が浮上している。中でも最も先行しているのが、シュワルツェネッガー知事率いるカリフォルニア州。ロサンゼルス―サンフランシスコの千百二十キロに専用軌道を新設し、最高時速三百五十キロの列車を走らせる計画だ。全線開通は二〇三〇年という長期計画だが、四百億ドルとも見積もられる資金の調達が政府助成などでメドが立ち、部分開業を視野に計画は動き出している。

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