メルケル「続投確実」が示すドイツ政治の変化

執筆者:佐瀬昌盛2009年10月号

日本とは打って変わって静かなドイツの総選挙。だが静かだからといって重要でないわけではない。選挙情勢から見えるドイツの変化とは。 ドイツでは九月二十七日に連邦衆議院選挙がある。が、一九九〇年の東西ドイツ統一以降で六回目になるその選挙戦は、有権者の関心という点で異例の展開となっている。有権者の熱気が乏しいのだ。ある世論調査機関だと、八月上旬になっても有権者の半数近くが九月二十七日の総選挙実施という予定を知らなかった。 とは言っても、有権者の関心が低調だからこの総選挙の意味も薄い、ということにはならない。見ようによってはその逆だ。まず第一に、四年間続いたCDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)とSPD(ドイツ社会民主党)とによる大連立政権は、この総選挙でほぼ確実に解消される。二大政党による大連立政権は西ドイツ時代の一九六〇年代後半に約三年間組まれたことがあるが、それを解消した六九年秋の総選挙戦は凄まじいものだった。今回、その点が違う。 第二に、なにせ「百年に一度」の世界同時経済危機という大波浪の中での総選挙である。ドイツ経済が負った傷はEU(欧州連合)諸国中ではまだましな方だが、それでも経済回復のため政府の役割が最重要であることは言うまでもない。ならば、有権者が政治に注ぐ眼差しは特別に熱っぽくて当然、ではないのか。ところが今回、この点でも違う。

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