政権交代で霞が関改革は進むのか。渡辺喜美行革担当相補佐官を務め、先ごろ退官した改革派官僚が、民主党へメッセージを送った。 この夏、城山三郎氏の「官僚たちの夏」がテレビドラマ化されて話題を呼んだ。昭和三十年代の通産省を舞台に、後に事務次官となる主人公の風越信吾はこう語る。「おれたちは、国家に雇われている。大臣に雇われているわけじゃないんだ」 戦後日本の復興のため何物にも怯まない主人公を象徴するセリフだが、「脱官僚主導」が焦点となる今日、違和感を覚える人もいるかもしれない。 だが、私は、官僚がこうした気概を持つこと自体は、何ら否定すべきではないと思う。 民間企業でも、「社長よりもずっと会社のためを考えている」と自負し、経営陣に楯突くことを厭わない社員は珍しくない。逆に、誰もが上司に唯々諾々と従うだけで、トップが暴走したときに歯止めのきかないような会社は、先行きが暗い。 ただ、こうした気概が、本当に国民や株主の利益に結びつくかは、常に微妙な秤の上だ。見識・熟慮・自制を伴わずに気概が発揮されれば、組織を混乱させるだけにもなる。 霞が関における最大の問題は、風越に代表される官僚たちの気概が、本来求められる慎重さを置き去りに空中浮遊し、それが次第に地表に降り積もって、制度や慣行として凝固していったことだと思う。それが「官僚主導」システムだ。

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