「ジャンボ機の後輪」北海道経済が示す先

執筆者:大神田貴文2009年11月号

景気の先行指標である北海道経済が悪化の一途をたどっている。そのすぐ先にみえるのは日本全体の不吉な将来像だ。 北海道経済は昔から、「ジャンボ機の後輪」と揶揄されてきた。景気が上向いても離陸は全国で最後。そして下降局面では他都府県に先んじて真っ先に地面に着くからだという。 そして今、北海道が景気の底板を踏み抜こうとしている。ひと呼吸遅れてやってくるのは航空機本体、つまり全国経済のハードランディングかもしれない。 九月下旬の五連休。紅葉の始まったばかりの北海道阿寒湖畔に立つひときわ大きな建物に、夜七時を過ぎても大型観光バスが続々と横付けされ、団体客が飲み込まれていく。北海道東部で最大級の宿泊施設、ニュー阿寒ホテルだ。全三百七十室がひさびさに満員になったが、ホテルを経営するカラカミ観光の苦境を多くの観光客は知らなかっただろう。 カラカミ観光は一九五三年に北海道洞爺湖で創業。札幌市郊外にある定山渓ビューホテルの六百四十七室など、温泉地ホテルの超大型化を進めて業績を伸ばし、九五年には株式公開を果たした北海道の名門企業だ。 九七年に北海道拓殖銀行が倒産し、北海道経済は深刻な打撃を受けたが、カラカミは“成長”を続けた。二〇〇〇年には仙台市の秋保温泉で倒産した地元ホテルを裁判所の競売で落札。和歌山の南紀白浜でも倒産した地産グループからホテルを引き継ぐなど、買収を重ねた。大型ホテルが倒産するたびに、銀行や再生ファンド関係者の間で買収候補としてカラカミの名が必ず挙がり、業界の救世主として名を轟かせた。

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