性感染症の「全体抑制」でエイズを封じ込めよ

執筆者:尾上泰彦2009年11月号

先進国がピークを越えたとみられる中、日本のエイズ患者は増え続けている。「落ちこぼれ」であり続けるのは日本の恥だ。 現在、新型インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)が注目を集めている。だが、そのはるか以前から現在に至るまで、別の感染症のパンデミックも続いている。エイズ(後天性免疫不全症候群)だ。 エイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)がヒトの免疫細胞に感染し、それを破壊して発症する感染症である。感染によってからだの免疫力は低下し、健康なときはなんともないような弱い病原菌にも感染して、最悪の場合は死に至る。 世界で初めてHIVへの感染が報告されたのは一九八一年のこと。国連合同エイズ計画(UNAIDS)などの推計によると、二〇〇七年末時点で世界のHIV感染者・患者(発症者)は三千三百万人にのぼる。その大半がサハラ以南のアフリカ諸国とされるが、新規の感染者は〇一年の三百万人から〇七年は二百七十万人へと減少した。 ところが、日本の患者数は、初めて感染が確認された八五年から増え続けている。他の先進国はいずれもピークを越えたとみられており、日本は「落ちこぼれ」だ。〇八年九月末時点での国内感染者・患者は一万五千人だが、これは報告された人数で、実際の数はもっと多いとみられる。

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