辛くも「決裂」を免れた日米関係の行方

執筆者:伊奈久喜2009年12月号

鳩山政権下の日米関係について当初の楽観的展望が消えたのは、十月のゲイツ国防長官訪日時のことだった。その後、何が起きたのか。 首脳会談を問題解決の最終的な場と考える立場からすれば、十一月十三日の鳩山・オバマ会談には辛い評価がつく。対立点がいわば「大人の話題」である経済問題ではなく、日米関係の土台である安保関係だったから深刻である。が、「決裂」を避けた点に妙な安堵感も漂う。 鳩山政権になっても、日米関係に大きな変化はない。野党民主党は政権をとれば、君子豹変する――。在京米大使館はワシントンに楽観的な報告をしていた。筆者も同様の趣旨を書いてきた。だが、少なくとも現段階では予想は当たっていない。 鳩山由紀夫首相は十月二十八日、君子豹変に触れた谷垣禎一自民党総裁の代表質問に対して「君子ではない」と述べた。ならば「小人」なのか。「易経」には、「君子豹変」に続いて「小人革面」(小人は面をあらたむ)とある。君子は鮮やかに態度を変えるが、小人は表面だけを変えるらしい。 鳩山氏はかつて対米「自立」論者だった。衆院選の政権公約(マニフェスト)では「対等」「緊密」な日米関係を訴えた。首相になってからの「日米基軸」論は、うわべだけなのか。確認するには、もう少し時間がいる。

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