編者がJAXA(宇宙航空研究開発機構)の『月のかぐや』。こんなことを言ってはミもフタもないが、私が書評を担当するのはチョット問題。私の女房はJAXA所属の宇宙飛行士だから。さらに、この本にはハイビジョンカメラで撮影した映像も載っているが、宇宙でハイビジョンカメラを操作した世界初の宇宙飛行士は私の女房だから(お察しのように、これはただの身内自慢。でも、この本でもこのことに触れてくれているのは実に嬉しい)。で、JAXAの“準身内”の私はこの本にケチなんかつけられないのだ。 が、しかし、“準身内贔屓”なんか抜きに、この本の写真は一見の価値があるし、文章には一読の価値がある。いや、必見必読だろう。 二〇〇七年九月十四日、日本の月探査衛星「かぐや」を搭載したH-IIAロケットが種子島から打ち上げられた。 その後、H-IIAロケットから分離された「かぐや」は地球周回軌道から月周回軌道に入り、〇九年六月十一日に月面に制御落下するまで月探査を順調に続けた。ところで、「かぐや」には観測機器が幾つも備えられていた。ハイビジョンカメラ、高分解能地形カメラ、月レーダサウンダー……。世界最先端の観測機器ばかりだ。日本がそんなに凄いなんて信じられないという方がいるかもしれないので、ここで私の経験を簡単に紹介しておこう。

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