「リオ五輪招致」だけではないルラ大統領の手腕

執筆者:クリス・クラウル2009年12月号

[リオデジャネイロ発]九月末、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領は、自国を訪れたブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領を指して「福音をもたらすイエス・キリスト」と持ち上げた。たしかに、八割の国内支持率と海外から高い評価を得るルラからは、今や向かうところ敵なしのオーラが出ている。 犯罪率の高さと交通網の混乱というマイナス点をはね返してリオデジャネイロが二〇一六年の五輪開催地に選ばれたのも、「南米初の五輪を」というルラの熱い訴えが国際オリンピック委員会に届いたからだ。むろん、そこに至るには、二年に及ぶルラの周到な作戦があった。開催地決定の投票権を持つ途上国にブラジル大使館や領事館を開設し、貿易関係を強化した。つまり、五輪招致の成功は、ルラの二つの強みが発揮された結果だった。それは、人としての魅力と、抜け目のなさである。 国内での人気が高い理由は極めて単純だ。経済運営の手腕と社会的目標の追求。ブラジルは咋秋の世界経済危機の打撃を最小限に留めただけでなく、早くもそこから立ち上がろうとしている。背景には、信用供与が拡大したことと、政府の景気刺激策の奏功がある。刺激策は自動車や住宅購入への補助、消費者ローンへの補助など。たとえば、七%の自動車取得税の免除によって、〇九年の自動車販売は対前年比一〇%増の三百万台に届く勢いだ。

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