本格的な景気回復を先取りするように、インドでは企業の人員増が本格化しつつある。 二〇〇三年以降八―九%台の経済成長が続き、人手不足が懸念されてきたインドだが、昨年九月のリーマン・ショック以降、景気とともに雇用状況も一転。成長の柱だったIT関連サービスを中心に、従業員の削減が目立つようになった。 再び風向きが変わり始めたのは、インドの会計年度が改まった今年四月以降のことだ。五月に発表された民間の調査結果では、管理職の採用への意欲が復活。八月には乗用車最大手のマルチ・スズキ・インディア、日本の第一三共傘下の医薬品大手ランバクシー・ラボラトリーズ、国営バローダ銀行などで採用が復活すると報じられた。 そして十月に入ると、IT関連業界でも大手が相次いで採用再開の意向を表明。その対象は管理職から一般従業員にまで広がり、規模も拡大している。大手のインフォシスが今年度中に最大二千人を、米アクセンチュアもインド事業で来年八千人を採るほか、国内大手のジェンパクトはすでに七千人を増員。金融の英スタンダード・チャータード銀行も来年インドで三千人を採用すると発表した。 名門インド経営大学(IIM)各校の卒業見込み者採用も、昨年は低調だったのが、今年はシティグループやモルガン・スタンレーといった米国の金融企業までもが積極的。労働市場では人件費に先高感が出てきたのみならず、福利厚生やフリンジ・ベネフィット(給与外待遇)の充実にあらためて取り組む企業も目立っている。

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