「ミスター検討中」長妻厚労相は大丈夫か

執筆者:吉田啓志2009年12月号

 十一月六日の参院予算委員会は、長妻昭、舛添要一両氏の新旧厚生労働相が直接対決する場となった。 労働者派遣法改正案の提出見通しを尋ねる舛添氏。長妻氏は「審議会で慎重に議論している」と受け流したが、舛添氏からは「(野党時代に)審議会は隠れ蓑で、官僚がやりたい放題だと言っていた。ずいぶん変わられた」と皮肉られた。 社会保険庁の年金不祥事を次々暴き「ミスター年金」の異名を取った長妻氏が、厚労省に乗り込んで約二カ月。この間、二〇一〇年度予算の概算要求のうち、天下り法人への補助金一千十三億円を削減するなど「税の無駄遣い」には目を光らせてきた。医療政策の転換に向け、中央社会保険医療協議会から日本医師会の代表委員三人を全員排除するなど、「政治主導」の人事も強行した。 しかし、社会保障政策に関する手腕は未知数だ。一時は記者団が何を聞いても「検討中」としか答えず、「ミスター検討中」と揶揄された。慣れつつあるとは言え、依然、野党時代の「キレ」は戻っていない。 官僚との距離の取り方も、まだ定まらない。従来、厚労省は新大臣を迎えると、各局長がびっしり一週間、入れ替わり立ち替わり、懸案を「ご説明」してきた。が、長妻氏はこれを拒否し、疑問に感じた政策の担当者を直接呼びつける手法を取る。官に洗脳されないための長妻氏なりの対処法だ。しかし、官の側には「大事なことが説明できない」(幹部)との不満も鬱積している。

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