海を渡る婚礼ビジネス「市場は上海にあり」

執筆者:竹田いさみ2009年12月号

 中国・上海では、富裕層の中国人カップルが、先を争って高級ホテルの宴会場を予約している。結婚披露宴の予約をするためだが、ホテルを訪れるのは結婚する本人たちではない。新郎の両親が予約の手付金として現金で五千元(約七万円)を持参してやってくるのが一般的だ。 とりわけ人気があるのは市内の一等地に陣取る日本のオークラガーデンホテル「花園飯店」。旧フランス租界の一角を占め、かつて毛沢東も散策した美しい庭園で知られる。結婚式も挙げられ、記念写真の撮影に絶好の「背景」にも事欠かない。 社会主義の中国には、宗教による挙式という習慣はない。かわりに、結婚を記念して綺麗な写真を撮り、豪華なアルバムを作成するのが流行だ。このため写真の背景が重視される。 花園飯店の旧館内にあるアールデコ調の階段は一番人気の撮影ポイント。プロの写真家はここぞとばかりに、階段の上下左右、さまざまなアングルからカップルを撮影してみせる。カップルの方も、最高の笑顔でそれに応えている。 日本流のホスピタリティーできめの細かい演出をするとあって、花園飯店は富裕層の予約客が後を絶たない。披露宴は週末しか受け付けていないが、すでに大宴会場は一年先まで予約で一杯。一卓十名掛けの丸テーブルを、最低でも十八卓(百八十人)使わないと予約できないが、キャンセル待ちのカップルが何組もあると聞く。

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