死者二百人超 イギリスを覆う厭戦気分

執筆者:マイケル・ビンヨン2010年1月号

「何のためにアフガニスタンで戦っているのか」。この問いに答えられない労働党政権は、苦境のなか総選挙を迎える。[ロンドン発]バラク・オバマ米大統領が十二月一日、アフガニスタンに三万人の兵を増派することを発表したのは、イギリスにとってはある意味、良いニュースだった。半面、ゴードン・ブラウン英首相の立場はいっそう難しいものとなった。 アフガニスタンの中でも最もタリバンの攻撃による外国軍死者が多いヘルマンド州に駐留するイギリス軍にとって、米軍の増派が負担の軽減につながることは間違いない。一方、万単位の米兵がヘルマンド入りすれば、九千五百人の英軍の存在感は薄れるだろうし、指揮系統も変わらざるを得ない(このためブラウンは、すぐさま五百人の増派を発表した)。 また、増派と同時にオバマが二〇一一年半ばから米軍の撤退を開始すると約束したことに、英軍司令官らは反発した。米軍の撤退時期が明らかになれば、タリバンはそれまで何とか戦い続けようと、逆に励みにすると言うのだ。実際、この理由から、ブラウンも英軍撤収の日程を口にすることは拒んできたし、アフガニスタンの安定のためには英軍は今後少なくとも五年間は駐留を続けざるを得ないであろうとも語ってきた。

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