インドネシア政府が十二月二日、公開予定のオーストラリア映画「バリボ」の国内上映禁止を決めた。「バリボ」はインドネシアが一九七五年に軍事侵攻した東ティモールで、取材中の豪ジャーナリスト五人がインドネシア軍に殺害された事件を描いた作品だが、「銃撃戦に巻き込まれて死亡した偶発的出来事」とするインドネシア政府は「映画の内容は事実を歪曲し、国益に反する」と上映禁止に踏み切った。 一般公開に先だって予定されていた外国人特派員クラブでの上映会やジャカルタ国際映画祭での上映も中止に追い込まれた。 バリボ事件については、豪メディアや遺族を中心に真相解明を求める声が強く、二〇〇二年の東ティモールの独立以後、現地での聞き取り調査などが行なわれ、「兵士による射殺」を裏付ける証言が相次いでいた。当時を知る東ティモールのホルタ大統領は「映画は大半が事実で五人はインドネシア軍により、拷問、殺害された」と語る。 ところで、上映禁止を打ち出したインドネシア映画検閲局(LSF)は、軍人や警察官、宗教・教育関係者で構成されており、今回は軍の意向を受けて禁止を決めたとみられている。 とはいえ、そこは海賊版の天国インドネシア。早くもインドネシア国内では「バリボ」の海賊版DVDが爆発的な売れ行きをみせており、当局が摘発に乗り出しているという。

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