「私のしごと館」など多くの無駄遣いが批判されてきた労働保険特別会計。現在でも十三兆円以上の積立金があり、「埋蔵金」の宝庫でもある。当然ながら行政刷新会議の事業仕分けでは多くの事業が槍玉にあがり、歳出削減が求められた。だが、民主党政権はその一方で、緊急経済対策の中の「雇用保険への国庫負担引き上げ」という名目で、一般会計からの繰り入れを逆に三千五百億円増やすことを決めた。 特会に入るお金を増やし、出口を絞れば、内部でお金が余るだけで新たな無駄遣いにつながりかねない。国が企業に休業手当の一部を助成する雇用調整助成金の利用増加が見込まれるから、というのが増額の表向きの理由だが、きちんとした収支見通しに基づいたものではない。雇用保険分に限っても五兆円の積立金があるだけに、まずはそれを取り崩すのが筋だろう。「雇用保険への国庫負担引き上げ」は、もともと衆院選のマニフェスト(政権公約)にも盛り込まれているため、民主党にとって既定路線ではある。ただ、この項目は政策理念に基づくものではなく、連合の要求をそのまま受け入れたに過ぎない。特会への繰り入れを増やせば、一般会計の歳出もその分だけ増え、最終的には国債発行の増額につながることになる。

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