加速する食品会社のグローバル再編

執筆者:高村悟2010年1月号

キリンとサントリーだけではない。世界で進む食品会社の再編、巨大化の意味とは――。「クロレッツ」をめぐって「リッツ」と「キス」が争っている――。と言ってピンとくる人は相当、食品業界に精通している人だろう。クロレッツは英食品大手キャドバリーの代表的商品のチューインガム、リッツは米食品大手クラフト・フーズ傘下のナビスコのクラッカー、キスは米菓子大手ハーシーの代表ブランドのチョコレートだ。いずれもパッケージをみれば誰でも名前を思い出す世界的なブランドだ。 これらの米欧の大手食品会社三社が今、壮絶なM&A(合併・買収)合戦を展開している。発端はクラフト・フーズがキャドバリーに対して百二億ポンド(一兆四千五百億円)で買収を提案したことにある。これをキャドバリー経営陣が「買収金額が安すぎる」と拒否。クラフト側は敵対的買収(TOB)に切り替え、あくまで飲み込む方針をあらわにした。これに対して、キャドバリーと生産委託などで緊密な関係にあるハーシーがホワイトナイト的に割って入り、クラフトを上まわる百七十億ドル(一兆五千億円)の買収額を提示した。クラフトが敵対的買収の金額を引き上げる可能性に加え、世界最大の食品メーカーで「キットカット」など菓子類でも有力ブランドを持つスイスのネスレも参戦を検討しているといわれる。食品業界では有数の巨大買収劇の行方は混沌としている。

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