中国資本流入疑惑で迷走 米AIGの台湾事業売却

執筆者:八ツ井琢磨2010年1月号

 経営再建中の米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)による台湾事業の売却案件が迷走している。AIGは二〇〇九年十月に傘下の台湾生保大手、南山人寿保険の株式九七・五%を二十一億五千万ドル(約千九百億円)で香港の企業連合に売却することで合意。AIGは金融危機のさなかに米当局から受けた総額千八百億ドル(約十六兆円)規模の公的支援の返済に充てるため、東京丸の内の「AIGビル」などを含む資産切り売りを進めており、これまでの最大案件である南山人寿売却も正式に決まったかに見えた。 ところが、南山人寿の買収を主導する香港企業、中策集団に中国資本の流入疑惑が浮上し、台湾当局が取引を認可しないとの見方が出てきた。台湾では現在、中国資本が株式の三割超を握る企業による金融機関への投資は認められておらず、中策集団がこの条件をクリアできない可能性があるためだ。 中策集団は香港で上場している小規模な電池メーカー。株式時価総額は約二十二億香港ドル(約二百四十億円)と南山人寿の買収予定額の七分の一にも満たない。買収資金は香港の資産家らを引受先とした転換社債発行などでかき集める方針だが、計画には不透明な部分が多く、「中国資本が中策集団を通じて南山人寿をコントロールするのでは」との懸念が出ている。

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