二〇一三年以降の温暖化問題に対応するための国際的枠組み(ポスト京都議定書)をにらみ、欧州連合(EU)は日米など先進国との国際交渉に戦略の軸足を移しつつある。国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP)では温室効果ガスの削減義務をめぐる先進国と新興国の対立などが目立つが、EUは先進国の間での負担割り当てという「次の交渉」を重視。一〇年末までの新議定書の採択を前提に日米などに揺さぶりをかけるとみられる。 中国やインドなどの新興国に対して米国や日本が削減目標の義務付けを要求するなか、EUは明確なスタンスを示さずにいる。十一月末の中国との首脳会談で、バローゾ欧州委員長らは国際交渉での連携を強調。自主的な削減目標の基準を絶対値ではなく「GDP(国内総生産)単位」とし、あくまで経済成長を優先する中国への批判は避けた。新興国に削減義務を強制するのは困難と判断し、むしろ新興国と組んで日米などとの交渉を優位に進めようという思惑が垣間見える。 そのひとつが途上国支援策。EUは一三年から二〇年までの間、年間一千億ユーロを投じるという構想を国際社会に提示。うち二百二十億―五百億ユーロを日米欧など先進国が負担するとした。だがEUがどれだけの費用を負担するかは曖昧なまま。先進国間での負担割合をあえて明示せず、国際交渉での切り札とする考えだ。むろん新興国を含めた途上国は支援策を示したEUに好意的で、日米に費用負担の国際的な圧力がかかる可能性がある。

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