ロシアの「国家的惨事」

執筆者:名越健郎2010年1月号

 ロシアのメドベージェフ大統領が国民のアルコール大量消費を「国家的な惨事」とし、ウオツカの最低販売価格設定、酒税増税など節酒政策に乗り出した。 大統領によれば、ロシア人1人当たりの純アルコール消費量は年間18リットルに上り、世界一。「信じられない量で、国と国民にとって脅威だ」と述べた。冷戦後に人気が高まったビールの総消費量も、今や中国、米国に次いで世界3位。 節酒令は、かつてゴルバチョフ旧ソ連大統領が書記長時代の1985年に打ち出し、空前の物不足や密造酒につながったことがある。ペレストロイカ時代に学生生活を送った「ゴルバチョフ・チルドレン」の大統領は、不人気な政策にあえて挑戦した。 ただし、節酒令はゴルバチョフだけでなく、歴代のロシア皇帝が試みて失敗しており、大統領は「数世紀も続いてきた問題を一夜で解決できない」とも述べた。「節酒政策は双頭政権の人気低下につながる」(ベドモスチ紙)とみられる。 問 メドベージェフ大統領が10時間あるロシア全土の時差を縮小する方針を打ち出したのはなぜか? 答 朝、モスクワの役人が二日酔いで出勤する頃、夕方の極東では役人が飲み始めているからだ。 メドベージェフ大統領が部下に尋ねた。

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