カンボジアの野党、サム・レンシー党(SRP)のサム・レンシー党首に対し、裁判所が逮捕命令を出したことが明らかになった。長年フン・セン首相と対立しながら、一度は和解した両者だけに、背景に政治的な思惑が隠されている、との見方が強い。カンボジア国内政治の流動化が懸念されている。 裁判所によると、カンボジアは現在ベトナムとの間で国境画定を進めているが、レンシー党首は昨年十月に国境の標識を勝手に撤去し、器物損壊などの罪に問われている。ところが、裁判所の出廷要請に応じなかったために逮捕命令が出された、という。 パリに滞在中の同党首は「標識撤去は罪ではなく、むしろ国境画定作業で地元農民が土地を失ったことが問題だ」とフン・セン政権を非難、政治的解決の準備が整わない限り帰国しない姿勢を示した。 フン・セン首相にとってレンシー党首は、かつて名誉毀損で訴えた相手。レンシー氏はフランスに自主亡命したが、国王の恩赦で二〇〇六年にカンボジアに帰国。その後、和解したとはいえ、国民の人気が高いレンシー党首の存在は、フン・セン首相にとって「喉に刺さったトゲ」だった。 このため、今回の逮捕命令で、レンシー党首が帰国しないなら、それでよし。帰国しても逮捕・裁判で政治生命を絶つというフン・セン首相の権謀術数が「標識撤去という微罪での逮捕命令」の真相とみられている。

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