「日本連合」が臨むイラク石油争奪戦の実相

執筆者:中嶋猪久生2010年2月号

緒戦の勝利で「銀メダル」は獲得した。だが、イラク側はより有利な契約条件にしようと画策しており、「金メダル」への道は平坦ではない。 苦戦を強いられてきた日本の石油業界にとって、久々の快挙である。昨年十二月十二日、日本の「石油資源開発」がマレーシアの国営石油会社ペトロナスと共同でイラク南部にあるガラフ油田の権益を落札した。 世界最大級の油田規模を誇るイラク。資源国が自国の油田・ガス田の国有化を進める中、復興資金を用立てるため外資に資源開発の門戸を開いたこの国で、日本は、ナシリヤ、ガラフ、ツーバという三つの油田に照準を合わせてきた。経済産業省の担当者の表現を借りれば、「金、銀、銅メダル」。残るターゲットは「金」と「銅」だが、前途は多難だ。     * 権益の確保は一朝一夕になしうるものではない。実は、日本は一九九七年にガラフ油田を手に入れる寸前まで交渉を進めていた。 経緯は、サダム・フセイン時代にまでさかのぼる。九一年の湾岸戦争後、国連による経済制裁が続く中、各国の企業は九五年ごろから米国の目を気にしつつイラクと水面下で交渉を開始。日本は、石油公団(当時)が過半を出資する石油資源開発が当局の後押しを受けて名乗りを上げ、イラク石油省と交渉を進めてきた。

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