この数年、東京にある各国の大使館の新築、改築、建て替えが盛んだ。 フランス大使館(港区南麻布)は昨年十二月に新庁舎が落成した。ベルギー大使館(千代田区二番町)も十月に竣工。一昨年はパキスタン大使館(港区南麻布)が移転して新築。アフガニスタン大使館(港区麻布台)も建物付きの土地を購入し、改築した。ドイツ大使館も数年前に建て替えた。 建物の老朽化、便利な場所への移転、また、高い賃貸料を払うよりも土地が安い時に購入して新築した方が長期的には得と、事情はさまざま。所有する土地の一部を切り売りして建設費を捻出する大使館もあるが、最もお得な建て替えをしたのはフランスだ。 フランス大使館が現在の場所に移ったのは一九二七年。尾張家の徳川義親侯爵が所有していた麻布の高台の傾斜地に広がる二万三千平方メートルの土地を日本政府が買い上げ、フランス大使館に貸与。七二年にフランス政府がこれを一括購入した。 大使館の建物は五七年に一度建て替えられたが、老朽化が進み、手狭で一部部局は別の場所に間借りしていた。このため建て替えが決まり、二〇〇八年六月、訪日したクシュネール外相が着工式を行なった。 大使館は所有する土地の約五分の一を、三井物産、野村不動産など五社で構成するコンソーシアムに定期借地(五十三年間)。コンソーシアムはここに定期借地権付きの高級マンションを建てて分譲する予定で、その代価として大使館新庁舎を建設した。

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