自民の足元に撒かれた農業予算の「劇薬」

執筆者:王武史2010年2月号

農水省の農業土木部門の予算を半減させ、戸別所得補償制度で農協の“財布”も痛打。小沢氏はとことん自民党のパートナーを叩く。「本当に恐ろしいことをする人だ」 この日、農林水産省の官僚から何度同じセリフを聞いただろうか。興味深いことに、誰も主語は言わない。お互いに言わなくても分かるということ以上に、その名を口にすることすらためらわれるような恐怖心が彼らを支配していた。 昨年十二月十六日、民主党は小沢一郎幹事長主導の下「国民の声を集めた」という重点要望を鳩山由紀夫首相に提出した。国民に約束したマニフェストの実行か財政規律の維持かで悩む首相に対し、小沢氏が優先すべき政策を示したと受け止められたが、その中には次のような項目が盛り込まれていた。「土地改良事業費は要求額四千八百八十九億円を半減することとし、所得補償制度等の財源とする。同時に、農業予算の大転換を求める」 土地改良事業とは、農地造成や農道整備、農業用ダムの建設といった農業関連の公共事業全般を指す。十八項目からなる重点要望の中で、具体的な金額まで挙げて削減を求められたのは一つだけ。縮小傾向にあったとはいえ、これまで続いてきた数千億円規模の予算を一気に半減するのは極めて異例の事態だ。震え上がったのが、農水省農村振興局(旧構造改善局)を牙城とする農業土木の専門家集団である。

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