キリン・サントリー「破談」に見る「創業家の意味」
2010年3月号
経営統合に成功すれば、世界的な有力企業が誕生するはずだった。今回の破談から得られる教訓とは――。 食品業界において「世紀の大合併」といわれたキリンホールディングス(HD)とサントリーHDの経営統合が破談となった。両社の統合は「勝ち組企業」同士が、需要のしぼむ国内市場にとどまらず、新興国はじめグローバル市場での大きな展開を目指す前向きな統合であり、実現すれば日本の産業史に残るものだった。 筆者は本誌二〇〇九年九月号で両社の統合の決断を評価しつつも、企業文化、体質があまりに異なっており、「現状では統合前にご破算になる可能性もみておくべきだろう」と指摘した。その懸念が現実化したことは残念だが、破談の原因を分析することは日本企業の経営によい教訓、参考になるはずだ。注目すべきは、創業家の持つ意味である。問題は「理念の違い」 今回の破談の最大の原因は、サントリーの創業者一族(佐治家、鳥居家)の統合新会社への影響力のあり方だったといえる。キリン側とすれば、統合新会社で創業家にあまりに大きなプレゼンスを持たれた場合、経営の自由度が低下し、キリンの既存株主の利益を毀損しかねない。さらに、人事や投資、配当政策などで創業家の壟断を許すことになるのを恐れた、とみて間違いない。
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