一向に改善されない待機児童の解消策として、厚生労働省は、財政難で増設が難しい保育所に代わり、保育ママの普及に力を入れている。保育ママとは、自宅などで一人で保育を行なう人のこと。一度に預かる人数は一―三人という“小規模保育”の担い手だ。 これまで保育ママ制度がある自治体は限られていた。しかし、厚労省は児童福祉法を改正し、「保育士か看護師」という現行の資格要件を、来年度から「一定の研修を受けた人」に緩和する。 この規制緩和には批判も多い。まず、「認定の基準や質の向上をどのような形で保証するのか」との疑問の声が、他の保育サービス業界や保護者の一部から上がっている。 また、「集団において育まれる社会性が身に付かないのではないか」と懸念している保育の専門家もいる。ただ、逆に子ども一人ひとりにきめ細やかな対応が可能な家庭保育に魅力を感じる親もいるので、どちらが正しいという問題ではないと思う。 わが国で少子化対策の切り札として「保育ママ」が浮上したのは三年ほど前のことだ。筆者は日本での可能性を探るため、保育ママの普及で有名なフランスで、三年前と二年前に約一週間ずつ取材したことがある。 その経験から言うと、三十年前のフランスと現在の日本は、よく似ている。フランスでは一九七〇年代から八〇年代にかけて集団保育施設を増やした。他方、地方分権が推進され、自治体の多くが財政難に陥った。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。