ポスト京都議定書の国際交渉が行き詰まるなか、気候変動対策に積極的な欧州連合(EU)が水面下で対抗措置の検討に動き始めた。温室効果ガスの削減に後ろ向きな中国や米国などを牽制するとともに、EUでの産業空洞化を回避し、欧州企業の国際競争力を確保するのが狙いだ。「カーボン・リーケイジの脅威が現実になりつつある」。EUのヘデゴー欧州委員(気候変動担当)は就任前の一月中旬、欧州議会でこう表明した。「カーボン・リーケイジ」とは炭素漏れ、つまり欧州企業が環境規制の緩い国に生産拠点を移し、温室効果ガスを排出しながら生産活動を続けることを指す。中国などで環境規制を受けずに生産された製品がEU市場に持ち込まれることも含まれる。 米国や中国は一月末に国連に提出した温室効果ガスの削減計画で数値目標の上積みを見送っており、このままでは環境規制の厳しいEUの企業だけが気候変動対策のコスト負担を強いられる恐れがある。 欧州委員会はカーボン・リーケイジに対して「必要ならば適切な手段を講じる」と表明。国際交渉の行方をにらみながら、今年六月までに新たな提案を加盟国に示す方針だ。EU加盟国も一月にスペインで開かれた環境相理事会で、非公式ながらカーボン・リーケイジへの対抗策を協議したとみられる。

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