「下着爆弾男」の衝撃

執筆者:名越健郎2010年3月号

 昨年のクリスマス。テロリストがアムステルダム発デトロイト行きの米デルタ航空機爆破を図った事件は“Underwear bomber”(下着爆弾男)として米社会に衝撃を与えた。 ナイジェリアの裕福な銀行家の家庭に育ったアブドルムタラブ容疑者(23)は、爆発性粉末の入った包みを下着に縫い込み、毛布に隠して注射器の化学物質を注入し、爆発させようとした。容疑者を取り押さえ、火を消したオランダ人男性は一躍英雄となった。 2001年の米同時テロから9年。この事件は、米国で大型テロへの警戒感が薄れつつあることに警鐘を鳴らした。 下着爆弾事件で、共和党のジュリアーニ元ニューヨーク市長が「ブッシュ時代には大型テロはなかった」とオバマ政権の対応を批判した。 テレビキャスターがコメントした。「仕方がない。9.11を忘れているのは彼だけではない」 下着爆弾男が独房で見た夢――。 男は航空機爆破に成功し、殉教者として天国に迎えられた。神が男に言った。「良いニュースと悪いニュースがある。良いニュースは、コーランの教えに沿って、72人の処女がお待ちかねだ。悪いニュースは、君の下半身は爆発で使い物にならない」 下着爆弾男がファーストクラスに連行されるのを見て、エコノミークラスの乗客が言った。

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