男が取り組むべきは「育児」に加え「地元」

執筆者:渥美由喜2010年4月号

「イケメンよりイクメンという言葉を流行らせたい」。一月の参院予算委員会での長妻昭厚生労働相の発言だ。「イクメン」とは「育児をする男性」の意。私は三年ほど前から講演などで、この言葉を使ってきた。だから、言葉そのものには異論ない。しかし、天の邪鬼の私は、大臣が口にするのはいかがなものか、とも感じる。 私のような民間の一研究者には言葉遊びによるゲリラ戦も一つの戦術だ。だが、大臣、それも担当閣僚ともなれば直接的かつ強大な権限を持っている。男性の育児参加を促そうとするのなら、他にやるべきことがもっとあるのに、と思ったのだ。 昨年の秋、厚労省が二〇一〇年度に展開しようとしていた「仕事と生活の調和推進事業」が民主党の事業仕分けの対象となり、予算計上は見送られた。 この事業の準備段階で、私はワークライフバランス(WLB)コンサルタント養成事業のカリキュラム作成委員を務めた。英国で一定の成功を収めた「チャレンジ基金」にならい、わが国でも企業に専門家を派遣してWLBの推進を促進させるという事業は画期的なものだった。 ところが、仕分け人たちは、“天下り団体(全国労働基準関係団体連合会)の仕事を作らんがための事業”と決めつけ、不要と断じた。仕分けの手法自体はユニークであり、広く議論を喚起したという点は評価できる。一方で、個々のテーマについては素人に近い“烏合の衆”が拙速に断を下したという感も否めないものだった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。