スープでもてなし 仏露連携のリバイバル

執筆者:西川恵2010年4月号

 ロシアのメドベージェフ大統領が三月一日から三日まで、初めて国賓としてフランスを訪問した。「フランスにおけるロシア交流年」の機会に合わせた訪問だったが、米欧各国はこの成り行きを注視した。 というのも、両国がかつてない広く深い協力に踏み出すのではないかと見られていたからだ。初日、フランスのサルコジ大統領との首脳会談がもたれ、これが確認された。 両首脳は共同記者会見で明らかにした。フランスからロシアへのミストラル級強襲揚陸艦四隻の売却交渉の開始。ロシア国内の鉄道建設のための合弁会社設立。ロシア最大のエネルギー会社、ガスプロム子会社への仏企業の出資。欧州とロシアの新しい安全保障機構の構築――政治、経済、軍事など広範な分野での合意だ。 軍艦売却は総額二十二億ドル(約二千億円)に上る。北大西洋条約機構(NATO)加盟国がロシアにこのような高性能の本格的軍艦を売るのは初めて。 記者団の質問に、サルコジ大統領は「冷戦のページをめくりたい。イラン制裁で協力してほしいと言いつつ、あなたを信用してないから売れないではパートナーではない」と述べ、メドベージェフ大統領も「売却は信頼の証し」と応じた。 翌二日、両首脳はルーブル美術館の「聖なるロシア展」のオープニングセレモニーに出席した。この一年間、四百を超えるロシアの舞台芸術や展覧会がフランス全土で繰り広げられる幕開けの式典。その夜、エリゼ宮で晩餐会がもたれた。

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