次の20年の20人 枋迫篤昌

執筆者:本田真澄2010年4月号

 東京三菱銀行ワシントン事務所長を辞して二〇〇三年にMFICを起業した枋迫氏は、金融の仕組みを使って貧困を解消する取り組みで世界的な脚光を浴びる。主な対象は中南米から米国に移り住んだ移民たち。MFICは米国の銀行から相手にされなかった彼らに送金・決済口座を提供し、安い手数料で祖国へ仕送りできるようにする一方、ネットワークに滞留する資金を真面目な移民への小口融資(主に一回あたり百ドル前後)に回し、自立を支援している。  枋迫氏はキャリアの三分の二を中南米を中心とした海外で過ごした。二十六歳の時、メキシコで知り合った行商人から夕食に招かれ自宅を訪れると、三人の子どもがスープに浮かんだ小さな肉のかけらに「半年ぶり」とはしゃいだ。貧困世帯の生活を目の当たりにした枋迫氏は「一回限りの資金援助」の限界を実感、のちのMFIC起業につながっていく。  MFICは「ソーシャルエンタープライズ(社会的企業)」として認知され、米当局や世界銀行傘下の国際金融公社(IFC)なども活動を後押しする。今では送金網は百カ国近くをカバー。ウォール街の強欲さへの批判が高まる中、「貧困層のための金融」は一層かがやきを増している。

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