人口減少社会でも「豊かさ」は実現できる

執筆者:大竹文雄2010年4月号

日本の人口減少はもはや避けられない。これからはそれを前提とした上で、必要な政策を講じていくべきだ。 人口減少は、日本経済に様々な影響を与える。一般的には、人口減少や高齢化は悲観的な要因として議論されている。人口が減少していくと、GDP(国内総生産)が減って日本が貧しくなっていくと考えられているからだ。そのため、政府は少子化対策に力を入れている。確かに、GDPは減るかもしれない。勤労層から高齢層への所得移転で成り立っている社会保障制度をそのまま維持していくことは難しい。教育、鉄道、住宅などの国内の需要に依存している産業は縮小を余儀なくされるだろう。若者を中心に非正規雇用や無業者が増えていることを考えると、将来の日本をますます悲観的に考えてしまうことになる。 いずれももっともな議論のように思われるだろう。しかし、人口減少は必ずしも日本経済にマイナスではない。そもそも、日本が人口減少を問題にし始めたのは、比較的最近のことである。一九五三年に政府に設置された「人口問題審議会」では、人口急増が国民生活水準低下の原因であると考え、その対策が議論されていた。五四年から五五年にかけてこの審議会は、人口政策としての家族計画の普及促進や増大する生産年齢人口に対する雇用拡大や失業対策を提言した。七四年に出された第二回「人口白書」でも出生抑制に努力することが主張されていたのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。