『自由からの逃走』 エーリッヒ・フロム著/日高六郎訳 東京創元社 1951年刊  エーリッヒ・フロムは一九四一年、四十一歳で『自由からの逃走』を世に問うた。その七年前、ユダヤ人である彼はナチスが政権掌握した祖国を避けて、フランクフルトからスイス経由で米国に亡命していた。米国で本書が出版されたとき、欧州でナチス・ドイツ軍はまだ破竹の勢いにあった。ナチス現象をどう理解すべきかの説明を求めていた米国知識人の間で本書はすぐに注目された。が、無論、ドイツでは本書は読めなかった。  私は三十歳代の半ば、つまり昭和四十年代前半に翻訳で本書を読んだ。邦訳初版が昭和二十六年末に出ていたから、かなり遅い。二十歳代半ばで書いた修士論文でワイマール共和制末期のドイツ社会民主党政権の失敗を扱ったこともあって、その時代のドイツの「自由からの逃走」過程を解明したとして評判の本書を遅ればせながら読むことにしたのだ。が、悪戦苦闘だった。フロムをフロイト・マルクス主義者と呼ぶ論者もいるだけに、本書にはこの二人の巨人への言及が多い。マルクスはとも角、それまでフロイトには親しんでこなかったので、必要に応じて摘まみ食い的にフロイトを参照する破目となった。

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