台湾経済部(経済省)が日本の半導体最大手エルピーダメモリを巻き込んで進めていたDRAM専業メーカーの再編が事実上頓挫した。台湾に六社ある専業メーカーを当局主導で一―二社に統合し、過剰生産が値崩れを招く悪循環を断ち切ろうと試みたが、各方面の調整に手間取るうちにDRAM市況が急回復。構想はタイミングを逸する形となった。  経済部が当初描いたシナリオは大まかに言うとこうだ。まずは業界再編の核となる企業を官民共同出資で設立した上で、世界大手のエルピーダや米マイクロン・テクノロジーと資本・技術提携し、先端のDRAM技術を導入。専業メーカーとも提携し、DRAMの生産委託を通じて生産量を統制するとともに、最先端技術も開発し、強敵のサムスン電子、LG電子など韓国勢に技術、コストの両面で対抗する――というものだ。  これを基に経済部は中核企業の台湾創新メモリー(TIMC)を昨年三月に設立。同社は技術導入元としてエルピーダを選定した上で、マイクロンとも提携し、陣営に取り込もうと画策したが、マイクロンは「独自技術の流出」を理由に拒絶。他の専業メーカーも参加に難色を示し、計画は船出から難航した。  台湾の専業メーカーは独自技術を持たないため、製造技術を海外メーカーに依存してきた。エルピーダとマイクロンはそれぞれ台湾の二社と提携関係にあり、マイクロンは台湾随一の企業集団、台湾プラスチック・グループ傘下の専業二社と提携している。マイクロン陣営はTIMCとの提携を辞退したものの、競争上不利になることを恐れ、エルピーダ陣営と「同等の支援」を当局に求めた。

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