スーダンの大統領に逮捕状は出ているのだが

執筆者:白戸圭一2010年9月1日

 ケニアの首都ナイロビで8月27日、同月4日の国民投票で承認された新憲法の公布式典が挙行されました。新憲法の中身とケニア政治の今後についての分析はケニア内政の研究者に任せるとして、この「アフリカ部屋」では、隣国スーダンのバシル大統領が式典に出席したニュースについて記しておきたいと思います。国際法の威信や正義の実現にかかわる重大な問題と考えるからです。

 バシル氏に対しては、スーダン・ダルフール紛争での集団殺害(ジェノサイド)などへの関与で、2009年3月と2010年7月にオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が発行されています。

 ICCは警察力を持ちません。スーダンに展開する国連平和維持活動(PKO)の任務にも、逮捕状の執行は含まれていない。さらにスーダン自身がICCに加盟していない。したがって、バシル大統領は国内及び他の未加盟国に滞在する限り、逮捕されません。

 一方、ICC設立条約に加盟している国は108カ国あり、これらの国には逮捕状を執行する義務が課せられています。ケニアも加盟国であり、本来ならばバシル氏が入国した時点で逮捕状を執行し、身柄を拘束しなければなりません。

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