重要な中西部の趨勢

執筆者:足立正彦2010年9月9日

 11月2日に行われる中間選挙について、中西部の趨勢に強い関心を持っている。
 2008年大統領選挙ではオハイオ、ミシガン、ペンシルベニア等の大統領選挙人を多く抱える同地域の主要州でオバマは勝利した。それだけではなく、保守的な有権者が多く、歴史的に圧倒的に共和党寄りのインディアナ州でも、オバマは民主党大統領候補としては1964年のリンドン・ジョンソン以来、実に44年振りに共和党候補のマケインを振り切った。
 だが、今回の中間選挙では、共和党が中西部で上院議員選挙、下院議員選挙、州知事選挙をはじめとする各レベルで大幅に党勢を拡大させようとしている。オバマ自身がかつて議席を持っていたイリノイ州選出連邦上院議員選挙も接戦となっている。
 2年前に共和党が大統領選挙、連邦議会選挙で民主党に敗北した際、共和党は「南部政党」になり下がってしまったのではないかとの議論が展開された。そのため、中西部における共和党の党勢拡大は今後のアメリカ政治を見つめる上で重要だと考えられる。
 また、今年は10年に1度の国勢調査も実施されている。11月の知事選、州議会選挙で勝利した政党は選挙区割り等でも大きな影響力を行使することになり、共和党が中西部でも大きく躍進した場合、2012年大統領選に向けて大切な足場を築く契機となる。
 オバマは「2009年米国再生・再投資法(ARRA)」に基づき、中西部諸州に設立された最先端バッテリー工場等を相次いで視察し、その雇用創出効果について有権者に対し懸命に訴えている。だが、製造業が集中し、引き続き高失業率に苦しむミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、インディアナ、ウィスコンシン等で民主党は苦戦を強いられている。
 08年大統領選挙直後には、伝統的に優位な北東部、太平洋沿岸に加え、中西部やヒスパニック系が多く居住する南西部でも優位となり、民主党は地域的に長期的かつ安定的な政治基盤を構築したと見られていた。だが、現在、2年前とは異なる状況が生じつつある。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。