朝鮮労働党代表者会はまだ始まりません。
 私の知人で北朝鮮専門家の「Mr Y」さんから代表者会への意見が寄せられました。
 彼の見方は外部社会の「後継」論ではなく、北朝鮮の「歴史的教訓」から今回の代表者会を見なければならないというもので、その観点からは「常務委員」就任はないとの見方です。
 「常務委員」就任はないのではとの見方は平井と同じですが、来週には結果が出るでしょう。(平井久志)


 44年ぶりに開かれる朝鮮労働党代表者会の目的はどこにあるのか。研究者を含めたメディアのすべてが三男、金ジョンウンの後継体制公式化ないし構築であるとみている。だが、私は、朝鮮労働党政治局決定書が同代表者会の召集目的として発表した「朝鮮労働党最高指導機関選挙」に重点を置きたい。額面その通りに受け取らねばならないという意味だ。ここに、「党大会」ではなく「党代表者会」召集ということにさらに注目する必要がある。党大会は、5年に一度ずつ開催開くことになっているが、故金日成主席と金正日は何度にもわたり「経済が良くなれば開く」として、なんと30年も経ってしまった。DPRKのメディアを見れば、現在の朝鮮半島情勢の認識は第2回党代表者会が開かれた当時、DPRKの1966年の情勢認識と酷似している。「戦争」危機感と日米韓同盟の深化などなど。
 
 1980年の第6回党大会以降、党・政・軍・社会団体の重要部署の職責、責任者たちの変動が多いが、党中央委員、中央委員候補の補選・充員・除名は一切、明らかになっていない。その点で、30年という歳月を埋める構成員の交代と充員、一部組織の改編(名称変更を含む)などがあるだろう。党優位国家にもかかわらず、一部の指摘のように「苦難の行軍」の時期に、党よりも人民軍隊が人民たちから信頼を受けた。だが、「先軍」に対する評価はそれほど良い方ではない。そうした点で、政治局発表文のように、党に対する人民の信頼強化と党運営の正常化を通じた「党の領導力機能強化」という意思が窺える。また「先軍思想」が指導的指針として含まれた憲法改正にともなう党規約前文と内容に関する改正に可能性がなくはない。第1回、第2回党代表者会で見られたように、党路線と関連したものも発表される可能性がある。
 
 「金ジョンウン常務委員選出」という一部の主張は、すこし厳しく言えば、DPRKの研究基礎常識を知らない発想だ。「落下傘人事 天下り」を促す一種の「圧迫」だ。金ジョンウンの後継体制公式化という分析はDPRKの後継体制を単純な「権力の移動」や「権力の継承」とみる方式や分析だ。この分析はまた、DPRKが「無法国家」「非常識国家」という仮定と前提が多分に内包されている。もちろんDPRKの後継体制は「後継」論ではなく「後継者」論、すなわち人物中心論だ。だが、単純に権力継承ではなく首領の継承だ。自然人「首領」個人の継承でなく、「集団」の継承という点を強調したい。「後継者論」の観点で見れば、人物論(後継者の資質、首領に対する忠実性、首領の思想的業績継承発展)、継承論(後継者の地位と役割)、指導論(後継者の権力構築)の三つがひと塊になって結集したものが「後継者論」だ。したがって、もう一度、強調するが、DPRK後継体制の構築は、権力継承の「後継」論ではない。

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