尖閣諸島の漁船問題は日中の根比べ

執筆者:野嶋剛2010年9月13日

尖閣諸島の漁船衝突事件が熱を帯びてきました。思いのほか、中国の強い姿勢に、日本の外交当局からは「おいおい、どうしちゃったんだよ」という驚きが聞こえてきています。

いろいろ論点はあるのですが、当面の注目は日本政府が逮捕された船長の身柄をどう処遇するかだと思います。

中国政府は、赴任したての丹羽大使を5回も呼び出し、強い抗議を行いました。そこでは「情勢判断を誤るな」「政治的決断を」というメッセージを日本に送ってきました。要するに、法律を曲げてでも早急に船長を釈放しろと言っているのです。

船長は送検されており、起訴処分が決まるまで、最大であと20日間近く拘留される見通しです。しかし、中国のメディアは連日、「船長の拘留は今日も続く」と推移を詳細に伝えており、このままではネットなどで燃え盛っている反日世論が抑えられなくなりますよ、と中国は警告しているわけです。同時に、中国政府の世論向けのパフォーマンスの面もあります。海洋権益のアピールという意識もあるでしょう。

さて、「法に従って処理する」としてきた日本政府は、どうするのでしょうか。中国重視で妥協して釈放するのか、あるいは、起訴まで拘留して「毅然とした外交」を貫くか。日本も簡単には屈したくはないでしょう。日中の根比べです。民主党政権にとって初の日中関係のトラブルと言ってよく、今後の日中関係の力関係を占うかも知れません。党内選に夢中の民主党政権はなかなか面倒な案件を抱え込みました。      (野嶋)                                    

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