「お国(=日本)は、実にうるさい。なにかにつけ、あれこれ文句、言い掛かりばかり」――老将軍は言い放った。第一線からは退いたものの、強硬な言辞で内外に知られる中国海軍の元首脳である。かねて日本が侵略した過去を口を極めて批判し、しかも自衛隊は「立派な装備を持っていても戦う意志のない張り子の虎だ」というのが口癖だった。「もはや日本軍には勝手させない。もうすぐ、東アジア最強の大国がどこか、世界は目の当たりにする」と吼え、続けて「2024年、我が軍は《中国牌》(中国ブランド=国産)空母を核とする3つの機動艦隊体制を築き上げる」と言い切るのだった。
 老将軍の鼻息が荒いのも無理はなかった。米国防総省(ペンタゴン)は8月、中国の軍事力に関する年次報告で「年内にも初の国産空母に着工」と発表したばかりだが、実態はさらに先を行く。党中央、軍中枢に加え、国務院国防科学技術工業委員会の指導を仰ぐ有力軍需企業の、それぞれで空母建造に関与する幹部らの情報を総合すると、空母建造・就役に向け、具体的スケジュールまで決定していたのだ。

党最高指導部が「ゴーサイン」

「中共中央・国務院・中央軍委関于国家海軍航空母艦工程規画正式動工決議」。長い名称を訳せば、国家海軍の航空母艦プロジェクト計画の正式着工に関する中共中央・国務院・中央軍事委員会の決議(以下『決議』)となる。2009年4月23日、胡錦濤総書記は海軍創設60周年を記念し、山東省青島沖で、海外14カ国の軍艦を招いて、建国後、最大規模の国際洋上観艦式に臨んだ。直後、北京で開かれた党中央政治局拡大会議は、海軍の誕生日を祝い、大きな「礼物=プレゼント」を贈った。総参謀部や総装備部、さらに海軍総司令部の高官らが、表決する権限のない「列席」の資格で参加して見守る中、「出席」した政治局員は全会一致で『決議』を採択した。党最高指導部が空母建造へ最終的なゴーサインを下したのだ。

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