日本には大勢のアフリカ研究者がいます。アフリカ各地の民族や社会を文化人類学の観点から捉える研究には長い歴史があり、本欄のもう一人の「専門家」である平野氏のような開発経済学や政治学などの社会科学分野の優れた研究者も多数存在します。

 しかし、広大な大陸の全ての領域が網羅されているわけではなく、ほとんど手つかずの空白の研究分野も当然ながらあります。そうした領域の一つは、1990年代以降のアフリカにおけるイスラム過激主義の台頭についてではないかと思われます。

 西アフリカのニジェール北部のアーリットで9月16日、ウラン鉱山の操業に関連するフランスの燃料会社アレバの社員ら7人(フランス人5人、トーゴ人1人、マダガスカル人1人)が、何者かに拉致されました。

 9月21日になって、北西アフリカ一帯で活動する「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(AQIM)」が犯行声明を出しました。中東の衛星テレビ、アルジャジーラは「フランス政府にわれわれの要求を伝える」とする同組織報道官の音声を放送し、フランス政府はテロ対策チームをニジェールに派遣して対応に当たっています。同組織は今年7月、78歳のフランス人男性をニジェールの隣国マリで拉致し、フランス政府の救出作戦が失敗した結果、男性は殺害されました。

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