アフリカを生き抜く日本人の力

執筆者:平野克己2010年10月2日

 現下日本の最大のアフリカ投資は、住友商事が27.5%を出資しているマダガスカルのアンバトビープロジェクトだ。ニッケルとコバルトを採掘して精錬し、日本と韓国で販売するというもので、韓国の国営資源会社コレスも同率で出資している。鉱山開発、搬出路と精錬工場の建設、港湾の拡張工事が2007年に始まり、予定通り進捗すれば2013年にはフル操業に入る。そうなれば世界ニッケル生産の4%を占めるようになり、コバルトでは最大生産者になる。日本のレアメタル自給率をいっきに高めてくれるし、最貧国マダガスカルにとっては輸出倍増、GDPも25%増大するという壮大なメガ・プロジェクトだ。

 昨年、プロジェクト事務所のあるマダガスカルのトアマシナに赴いた。天候が荒れれば飛行機が飛ばず、7時間かけて陸路で行かなければならないという町である。住友商事から派遣されているN氏とも会い、食事をご一緒した。N氏とは南アフリカ駐在時からの知り合いで、ヨハネスブルグでは、端正な容貌と都会的な所作でシティー派商社マンとして鳴らしていた。
「ここでの勤務は、数週間連続で働いたあと1週間の帰国休暇という、完全に鉱山会社のスタイルです。」
N氏はすっかり“山男”風になっていた。私たちが入った雨季のトアマシナはあちこちで道路が冠水し、ホテルの部屋では蚊がブンブン唸っている。町を歩けば「金をくれ」と子供たちが寄ってくる、見慣れた最貧国風景だ。N氏はアンバトビープロジェクトの立ち上げから参画していた資源のプロだが、いまは現場で日の丸を背負っている。

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