北朝鮮労働党人事の闇

執筆者:春名幹男2010年10月14日
北朝鮮の労働党創建65周年の閲兵式で、ひな壇に登場した金正日総書記と3男の正恩「大将」(C)EPA=時事
北朝鮮の労働党創建65周年の閲兵式で、ひな壇に登場した金正日総書記と3男の正恩「大将」(C)EPA=時事

 朝鮮労働党代表者会から労働党創建65周年記念の閲兵式に至る行事、まさに北朝鮮「金王朝」の3代目お披露目の儀式だった。  金正日総書記から金正恩「大将」への権力委譲への道を踏み出したのは確かなようだ。  だが、情報機関はこれでどうなるのか。その答を見出すことはできなかった。それ以上に困ったのは、特に情報機関に関して、新人事が事前の予測と違う結果になったことだ。  2009年から10年にかけて、北朝鮮は大がかりな情報機関の改編を行なった。主要な情報機関は、国家の最高軍事指導機関である国防委員会の傘下に入った。それに伴って、呉克烈国防委員会副委員長(79)に情報機関の権限が集中した、とみられていた。  しかし、今回の党幹部人事では、呉克烈氏の名前は外され、彼の去就が全く分からなくなったのだ。  呉克烈氏は、秘密工作機関である人民武力省(国防省)偵察総局を指揮下に置いているとみられていた。今年3月に起きた韓国海軍哨戒艦沈没事件は偵察総局が主導した事件、と韓国当局はみている。  この沈没事件は、金明国総参謀部作戦局長が直接の責任者だった。朝鮮人民軍の作戦を統括する金明国局長は昨年11月の韓国海軍との銃撃戦で責任を問われ、大将から上将への降格が伝えられていた。その局長が沈没事件直後の4月、上将から大将に再昇格した。それに伴い呉克烈氏への評価も高まったとみられていた。  しかし、今回の党幹部人事では、呉氏は党中央軍事委員会の人事でも、党政治局人事でも名前が挙がらなかったのである。

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