ある男の命日

執筆者:白戸圭一2010年10月20日

 西アフリカの小国ブルキナファソを最近訪問した知人が帰国し、10月15日に都内で一緒に食事した時のこと。知人が突然、「今日はサンカラの命日ですよ。サンカラに乾杯しましょう」とワイングラスを差し出しました。長い間忘れていた「サンカラ」の名を久々に耳にし、学生時代にアフリカについて勉強し始めたころを懐かしく思い出しました。

 トーマス・ノエル・サンカラは、1983年8月4日から1987年10月15日までブルキナファソの大統領の座にあった同国の軍人です。
1949年12月生まれのサンカラは19歳で国軍に入隊。軍政下の1981年、31歳で国家情報長官に抜擢され、83年1月に首相就任。そしてクーデターによる政権掌握で同年8月、33歳の若さで大統領に就任しました。就任の翌年、サンカラは国名を、それまでのフランス語の「オートボルタ」から、この地の人々の主要言語(モシ語とディウラ語)で「高潔な人の国」を意味するブルキナファソに変更しました。

 33歳という若さはやや例外的ではありますが、クーデターによる政権掌握はアフリカでは全く珍しいことではありません。「汚職の追放」を掲げてクーデターで政権掌握→民族主義を鼓舞→自らも独裁者に→やがて汚職まみれ。1970~90年代のアフリカには、武力で政権掌握した政治指導者たちが辿る、このようなお決まりのコースがありました。

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