10月27日ネストール・キルチネル前大統領が心臓発作により、アルゼンチン南部サンタクルス県のリゾート地の自宅で倒れ、死亡した。29日ブエノスアイレスで行われた葬儀には17万人の市民が大統領官邸内の棺に横たわる前大統領に別れを告げた。雨の下で葬列は深い悲しみに包まれたと、報道は伝えている。

 葬儀には南米諸国の元首がこぞって出席するなど、前大統領の突然の訃報は内外に衝撃をもって受け止められた。3年前、夫人のクリスティナ・フェルナデス上院議員が大統領に当選し政権を引き継いだ時は夫婦間の権力継承と話題を呼んだが、与党ペロン党を仕切る前大統領が実質的に政権運営を担い、来年の大統領選挙に再出馬するとみられてきたからである。またルラ・ブラジル大統領やチャベス・ベネズエラ大統領の肝煎りで対米関係を意識して結成された南米諸国連合(UNASUR)の初代事務局長に就いていたことにもよる。

 「一つの時代の終わり」(エコノミスト)、「新たな時代の始まり」「ペロニズムは指導者を失い、空白が将来を決める」(現地有力紙クラリン)、「深刻な政治的不確さの時代の幕開け」(ニューヨークタイムズ)、「将来に大きな空白残す」(フィナンシャルタイムズ)、「不確定さとともに変化の可能性を開く」(ウォールストリートジャーナル)と、各紙電子版は実力者の死がアルゼンチン政治に及ぼすであろうその影響の大きさ、深さを伝えている。

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