地球環境保護への積極的な取り組みで知られる、森と湖の国フィンランド。11月末からは、メキシコ・カンクンで、2012年に期限切れとなる「京都議定書」に続く地球温暖化防止のための国際的な取り決めを話し合う COP16(国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議)が開かれる。名古屋で開催された COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)出席のため来日したレヘトマキ・フィンランド環境大臣(写真=37=)に聞いた。 ――昨年暮れにデンマーク・コペンハーゲンで開かれた前回会議では、先進国と途上国の利害対立が明白なものとなりましたが、メキシコで成果はあがるでしょうか。レヘトマキ 期待が高くないことは承知しています。しかし、温暖化防止のための国際的合意が必要なことは間違いないわけですから、一定の成果は出せると思います。とりわけ、森林破壊の削減に関して新たな取り組みを始めなければいけないと考えています。名古屋での、日本をはじめとする各国政府との議論は、その準備とも言えます。 ――たしかに、フィンランドは広大な森林を手厚く保護してきたことで知られていますね。レヘトマキ はい。保護地域を決めて、持続可能(サステイナブル)な森林を100年以上守ってきた長い経験があります。森林を管理するためのシステムとノウハウを持つフィンランドは、途上国に対する技術支援も行なっています。 ――フィンランドの5都市が現在、カーボンニュートラル(炭素中立化=排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量であること)地区プロジェクトに参加していると聞きました。2030年までに温暖化ガスの排出を2007年の水準に比べて80%以上削減するというこの野心的なプロジェクトの中に「気候ダイエット計算機」という言葉を見つけました。これは何ですか?レヘトマキ 「計算機」という名前がついていますが、機械ではありません。いわば計算式のようなものです。1人1人の暮らしの中で、何からどれだけ温暖化ガスが出ているか、わかりやすく数値で示すものです。普段の暮らしの中で、いつ何をしているときに温暖化ガスが出るかが一目瞭然になれば、何を削ることができるかわかりやすい。地球環境を保護するために各家庭で何ができるか、関心をもって参画してもらうことが肝心なのです。  環境問題は政治的にも重要課題と位置づけられていますが、フィンランドのような寒い国では、人々の関心はお天気次第のようなところがある。2年前、フィンランド南部は、記録的な暖冬となりました。すると、温暖化への警戒心は非常に高まって、人々の意識も高くなった。ところが、昨年の冬は雪も多く、とても寒かった。すると、人々の関心は簡単に冷めてしまう。 ――環境保護への意識を高めるのは難しいことでしょうか?レヘトマキ 必ずしもそうとは言えません。小さな変化は受け入れてもらえます。でも、車に乗る代わりにバス停まで歩く。バスを待つ……など生活上の不便を伴う変化には、どうしても抵抗が強くなります。

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