住宅着工増の陰で深刻化する「空き家問題」

執筆者:鷲尾香一2010年12月14日

 新設住宅がとどまるところを知らない増加を続ける一方で、住人がいなくなり、朽ち果てていくばかりの“空き家”が増加し、社会問題化している。
 2010年10月の新設住宅着工戸数で、分譲住宅は前年同期比37.1%増と8カ月連続の増加、このうちマンションは同73.2%増と5カ月連続の増加、一戸建住宅は16.9%増と10カ月連続の増加となった。
 背景には、歴史的な低金利環境が続き、住宅ローンの金利負担が少ないことや、地価の下落により都市部でのマンション価格が低下したことに加え、条件のいい土地を分割し、数戸の一戸建住宅を建て、低価格で販売するミニ開発を得意とする「パワービルダー」と呼ばれる地域密着型の住宅会社の台頭がある。
 少子・高齢化による人口減少が進んでいる日本では、住宅需要の余剰状態が継続している。にもかかわらず、新設住宅が増加している要因は、人口が都市部に集中する傾向が一段と強まっていることにある。
 10月の新設住宅着工戸数で見た場合、実際に新設マンションは3大都市圏(首都圏、中部圏、近畿圏)で増加傾向を強め、首都圏では東京都が前年同期比179.5%増、埼玉県が同191.1%増、千葉県が同80.0%増、神奈川県に至っては同271.9%もの増加となっている。この傾向は分譲住宅でも同様で、3大都市圏はいずれも増加傾向が続いており、特に首都圏は同72.2%増で8カ月連続の増加となっている。また、3大都市圏だけではなく、地方都市でも都市部に人口が集中する傾向にある。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。