北朝鮮のナンバー2である金永南・最高人民会議常任委員長が昨年十一月に密かにモスクワを訪問していたとの説が流れている。先延ばしされているイワノフ・ロシア外相の訪朝を二月にも実現すべく話し合ったとされる。実現すれば、旧ソ連のシェワルナゼ氏以来十年ぶりの外相訪朝となるだけに注目される。

 北朝鮮は昨年来、EU諸国、オーストラリアなどを相手に幅広い関係改善を模索。この一月、主要七カ国(G7)メンバーでは初めてとなるイタリアとの国交樹立発表に成功した。対外関係全般を底上げしたうえに冷戦期からの同盟国ロシアとの完全復縁が実現できれば、外交カードの厚みが増すのは間違いない。

 北朝鮮の「対戦国」米国との関係改善の動きは、最近足踏みが続いている。今年秋の米大統領・議会選挙に向けて、対北朝鮮強硬派の共和党がどれほど勝ちそうか風向きを見た上で、現政権との取引を決めようとしていると米政府関係筋はみる。

 北朝鮮の経済状況は最悪期を脱しつつあるとはいえ、依然、食糧事情は厳しい。当面、対米交渉は値踏みの時間稼ぎを決め込み、その間にロシア、欧州などとの関係改善にいそしむ戦略に出ているようだ。

 

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