三十年来の北アイルランド紛争が、対立するカトリックとプロテスタント共同による自治政府の発足で、ようやく恒久和平に動き出したが、英国のブレア政権が和平工作に治安諜報機関のM15を活用した事実が明るみに出て、カトリック勢力やアイルランド政府と英政府の間に不信感としこりを残している。

 カトリックのアイルランド共和軍(IRA)の武装解除をめぐりいったんは破綻した和平プロセスは、ミッチェル前米上院議員の仲介で昨年九月から立て直し作業に着手した。ところが、この期間にIRAの政治組織であるシン・フェイン党のアダムズ党首が使った車に、高性能の盗聴器が仕掛けられていたことが判明。同党はもとより、カトリック勢力の後ろ盾であるアイルランド政府も英政府に抗議する事態となった。

 ブレア首相は下院質疑で「諜報活動については、一切話すことができない」と説明を拒否したが、洗練された盗聴の手口は明らかにM15のものとみられている。M15はIRA内にもスパイ網を張り巡らしており、プロテスタント指導部に自治政府参加を説得した際も、プロテスタント住民やカトリック側の動向に関する諜報情報が使われたようだ。

 

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