多様性がもたらすインドネシアの混沌

執筆者:浅井信雄2000年1月号

「多様性の統一」がインドネシア理解のキーワードであり、また国家目標のモットーでもある。では、この国はどの程度に多様なのか。 大小一万七千五百八の島からなる多島国家で、うち約六千の島に人が住む。総人口はCIA(米中央情報局)の一九九九年七月現在の推定によれば、二億一千六百十万八千三百四十五人で世界第四位だ。その中に、三百以上のエスニック集団、二百五十以上の言語、世界の主要宗教のすべて、そして多くの土着の伝統信仰が共存する。 島が異常に多いという事実からだけでも、この国の統合・維持はきわめて困難なことがわかる。内在的な遠心分離傾向は宿命であり、求心力を伴う中央の強権、または国軍の物理的力が重要になってくるのだ。 多様な住民の大半はマレー系の血統を引き、オーストロネシア系(マレー・ポリネシア系)の言語を話し、イスラムを信奉する。欧州、アラブ、中国、インド系との混交もみられる。 これら多民族の影響力をみると、政治的にはジャワ島のマレー系、経済的には中国系、宗教的にはイスラム系がきわだって優勢といってよい。 ジャワ系は総人口の四五%をしめる最大のエスニック集団、中国系は総人口の約三・五%にすぎないが、数世代にわたって定住し、商業部門を中心に国富の七五%を動かすといわれる。

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