予防ジャーナリズムを目指して

執筆者:道傳愛子2000年1月号

 担当している番組で昨年十一月、国連のコフィ・アナン事務総長にインタビューした。 事務総長は、「頻発する内戦では従来の国家間の紛争に比べて一般市民の犠牲者が多く、戦闘員が市民を戦略的な攻撃目標とするケースも増えている。国際人道法・ジュネーブ条約違反であるこうした行為は、まさに人道に対する挑戦である」と語った。加えて、こうした紛争の予防に必要なのは予防外交のみならず「予防ジャーナリズム」だとも。「紛争の芽を見つけたら、顕在化する前に課題を報じ、国際社会に訴えかけていく行動を通して、メディアも紛争の予防に大きな役割を果たせるのです」と言うのだ。 国際人道法とは、人道的な立場から紛争の犠牲者を助け、できる限り犠牲を少なくするための国際法規である。内戦の増加につれて一般市民の犠牲者が増える、といった問題に対応するため、一九七七年には二つの追加議定書が作成されたが、日本はいまだ調印していない。私はコロンビア大学大学院に留学中、旧ユーゴスラビアやアフリカの内戦での実例に関連づけながら、日々報道されるニュースがいかに国際人道法と深く関係しているかを学んだが、現実にはその意義はまだ広く理解されているとは言えないようだ。

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