「ハイテクや金融の分野と同様に、欧米のライブ・エンタテインメント業界では新規参入と革新が繰り返され、業界地図やビジネスのルールは転変を続けている」(秋山弘志、北谷賢司『エンタテインメント・ビジネス』新潮社刊 一三〇〇円)

 ローリング・ストーンズ、マイケル・ジャクソン、マイク・タイソンなど、海外の超大物アーティストやスポーツ選手を、いかにして東京ドームに招聘し、興行を成功させてきたか――。本書は、いわゆる「外タレの呼び屋」として、直接の交渉に当たってきた二人の黒衣のビジネス手記である。

 著者の二人は、東京ドームの興行責任者を長年務めてきた秋山氏と、米国の大学教授でありながら、この分野に携わった北谷氏。その異色の組み合わせ自体も興味深いが、何といっても最大の読み所は、海外の辣腕プロモーターや弁護士を相手に、二人があらゆる経験を生かし、知恵や人脈を駆使してタフな交渉をする、その経緯だ。

 興行の世界には、表の華やかさと裏腹に、いかがわしい雰囲気と不透明さがつきまとう。しかし二人が挑んだのは、ドンブリ勘定になりがちな興行の世界に、予算管理が可能な透明性の高いビジネスの論理を持ち込むことだった。そういう二人の挑戦の記録と共に、エンタテインメント業界が、いかに個人事業のレベルから巨大ビジネスに発展していったかの内幕がよく書き込まれている。

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